2015年6月18日(木)
家族を見守る時計の話
私が生まれ育った実家の居間には、
鳩時計がありました。
お家の形の箱全体に凝った木彫りの装飾が施されていて、
三角屋根の真ん中には木彫りの鹿の頭がついていました。
小さな扉から30分に一回、白い小さな鳩が飛び出て
「ぴっぽ」
と鳴きます。
決まった時間にしか出会えない小さな白い鳩は
小さい私にとってはなかなかミステリアスな存在でした。
脚立をもってきて、扉を開けてのぞいてみたこともあります。
鳩は時刻の数だけ鳴くので、12時だと12回。
鳴き終わるまで家族の会話が無意識に止まる、
あの感じは今思い出すと面白くて、懐かしい光景です。
そういえば、
おじいちゃんのお家にあった柱時計は、
「ぼーん、ぼーん」と、けっこう大きな音がしていましたし、
ウッドデポにも、
数年前に店長が骨董市で一目ぼれしたアンティークの船時計がありますが、
「チチチチ…」と、細かく音をたてて時を刻んでいます。
昔ながらのゼンマイ式の時計には音がありますが、
でも誰もうるさいなんて、思わないものですね。
生まれたころから家族の暮らしを見守ってくれた鳩時計は、
数年前についに壊れてしまい、取り替えられました。
帰省して、居間に新しい時計が掛っているのを見たとき、
予想外に寂しかったのを覚えています。
一日に何度も繰り返される「時計を見る」という行為は
生活の一部になりすぎているので、
普段時計の存在を特別意識することはありませんが、
でも、どこからも見やすいよう、たいていリビングの一番いい場所に掛けられるので、
知らぬ間に家族の生活空間のシンボルになっているものです。
新しいお家のリビングルームを計画するときも、
「ここにはあの時計を掛けよう」とイメージしてみてください。
リアルにそこで暮らしていくイメージが持てるのではないでしょうか。
「大きな古時計」を口ずさみたくなる、
時計の話でした。
ウッドデポの船時計。鳩時計も、写真が残っているとよかったなと思います。